飲食店は全国に約70万のお店があるといわれています。
しかしながら、若干の増減はあるものの近年の飲食店の数はこの数字から変わることはありません。
これは、新規店舗のオープンが止まっているわけではなく、新しい飲食店が開かれている矢先に、閉店している飲食店もあるということです。
つまり、飲食店を長年続けていくことは並大抵の努力ではないのです。
飲食店経営において大事なこと
飲食店を経営する際に重要な点は、お店を開業する前の準備段階と、実際に営業を始めてからの運営段階に大きく分けられます。
まず、開業前の準備段階では、どのようなコンセプトや業態のお店にするのか、そしてどの場所に出店するのかといった基本的な方針を決めます。これらは一度決めると大きく変更することが難しいため、入念な計画と準備が不可欠です。
次に、営業を開始した後の運営段階では、日々の営業の中で発生するさまざまな課題や問題に対して、どのように対応し解決していくかが求められます。これらの課題は常に発生するため、その都度適切な対策と改善を行う必要があります。
それでは、飲食店経営におけるこれら二つの重要なポイントについて、詳しくお話ししていきたいと思います。
お店を出す前の準備!
まずは、自分が経営する飲食店のコンセプト設計から始めましょう。
お店を開く際の重要なポイントは以下の三つです。
業態の選定
立地条件
競合店の分析
これらの要素をしっかりと検討して開業すれば、良いスタートを切ることができるそうです。
それでは、それぞれのポイントについて順番に説明していきます。
業態は自分の経験を活かしたものを選ぶべき。
場所の選定と順序が前後することもありますが、飲食業の経験者であれば、まずどのような業態で店を始めるかを考えるのが自然でしょう。
例えば、長年ラーメン店で修行を積んだ方が、未経験のフレンチレストランを開業することは稀です。もちろん、例外的なケースも存在しますが。
要するに、ラーメンの経験がある方はラーメン店を、ソムリエとしてワインの知識を持つ方はワインを豊富に取り揃えた店を開くなど、これまでの経験を最大限に活かせる業態を選ぶことで、より良い店作りが可能になるでしょう。
「駅前・人口密集地・主要道路沿い」の場所が必ずしも最高の立地とは限らない!
飲食店の経営において、立地選びは極めて重要な要素です。この決定が、今後の店舗の成功を大きく左右すると言っても過言ではありません。
多くの人が「駅前」「人口密集地」「主要道路沿い」といった条件で場所を探しますが、これはあくまで一つの要素に過ぎません。
例えば、周辺に大学多く集まる水道橋駅を考えてみましょう。都市部で学生が多く、さらに東京ドームがあるため、スポーツ観戦やライブを楽しむ人々も集まります。一見、「駅前・人口密集地・主要道路沿い」の条件を満たしているように思えます。
もしあなたが客単価7,000円の和食店や15,000円のフレンチレストランを開業しようとしている場合、この立地は適切でしょうか。どんなに料理が美味しくても、アルバイトや奨学金で生活する学生たちは高価格帯の店には足を運びにくいでしょう。また、スポーツ観戦やライブで盛り上がったお客さまは、静かな雰囲気の店よりも、賑やかに会話やお酒を楽しめる場所を求めるかもしれません。
つまり、飲食店にとっての「良い立地」とは、「出店エリアと業態の需要がバランス良く合致している場所」を指します。
出店を考えている場所で、カウンターを手に立ってみましょう。
これは、店舗の場所を決める際の一歩進んだ方法です。
この「出店予定地で一日中、数取器を使って通行人を数え、その特徴を観察する」という方法は、非常にアナログではありますが、そのエリアのニーズを正確に把握するのに役立ちます。
一日を通して通行人数を調べることで、売上が見込めるピークタイムが明確になりますし、通行人の特徴を知ることで、客単価の予測や求められるメニューも想像できるでしょう。
また、「季節ごとの祭事や通行人の変化を調べた」ことについては、例えば、出店予定のエリアが花見の名所であれば、遠方からの来客が見込めて売上が伸びる可能性があります。一方で、大学が多い地域なら、夏休みや春休みの期間に売上が落ち込むリスクもあります。
競合店の分析で見えてくる自店の方向性!
店舗を開く前に、出店エリアで競合となり得る飲食店を徹底的に調査することは欠かせません。
では、競合店のどのような点をリサーチすべきでしょうか?
まず、実際にそのお店を訪れることから始めましょう。一度きりではなく、平日・週末のランチタイムやディナータイムにも足を運びましょう。
その際、スタッフの接客態度、業態、客単価、席数、そして来店客の属性(家族連れか、主婦のグループか、年齢層、常連客が多いかなど)を観察し、自身の店舗づくりのヒントが得られます。
スタッフに関しては、もし競合店の接客レベルやホスピタリティが低ければ、自店ではスタッフ教育を徹底することで「接客の良い店」として差別化を図ることができます。
業態や客単価、席数については、競合店と同じ業態で勝負する戦略もありますが、相手が老舗の繁盛店である場合は不利になることも。その場合、お客様のニーズに合致する別の業態やメニューで挑戦するのが賢明でしょう。
客単価は提供する業態によって異なりますが、繁盛している競合店の客単価は、その地域の需要に適していると考えられるため、参考にすると良いでしょう。
席数に関しても、競合店が団体客を収容できない規模であれば、自店を大規模にして大人数を受け入れるのも一案です。反対に、団体客の需要が少なければ、同程度の席数に留めるのも有効です。
また、来店客の属性を調べることも重要です。競合店がどのようなターゲットを設定しているのかを理解すれば、自店の差別化ポイントを見つける手がかりになるでしょう。
飲食店を始めてからの課題と改善策
ついに、理想的な場所に店舗をオープンし、ニーズや競合店のリサーチも万全!
満を持しての開店です。繁盛店を目指して頑張ろう!
と、意気揚々と営業を開始しました。
しかし、開店から半年が経過したところで…
事前の準備も十分で、お客様もきちんと来店していただいているのに、なぜか黒字になっていない…なぜだろう…?
こういった悩みは、飲食店の経営では珍しくありません。
この原因に気づけない店舗は早々に閉店してしまう可能性があり、早急な解決策が必要ですが、その方法は意外とシンプルです。
このような問題で注目するポイントは以下の4つです。
売上
原価
人件費
営業利益
これらの項目のどこかに必ず原因があり、それをクリアすれば必ず黒字化に向かうとのことです。
それでは、順を追って説明していきましょう。
売上について
売上高とは、後ほど説明する費用を除いた、「どれだけ売り上げたか」を示す単純な数値です。この数値から各種費用を差し引くことで、黒字か赤字かを判断することができます。
つまり、売上高が低い場合、その原因は主に「お客様の来店数が少ない」や「設定している客単価が適切でない」ことが考えられます。
お客様が来店しない理由は多岐にわたると思いますが、立地など変更が難しい要素ではなく、まずは料理や接客の内容や質を見直し、改善策を講じることが重要です。
もし設定している客単価が適切でないと感じる場合、価格設定やメニュー構成の再検討が必要です。また、お客様に追加の注文を促す工夫をすることも、問題解決への道となるでしょう。
原価率について
黒字経営を達成するためには、原価率は非常に重要な指標の一つです。原価率は次の式で計算されます:
原価 ÷ 販売価格 = 原価率
原価率は低いほど、飲食店の利益は増加します。しかし、あまりに低い原価率を追求すると、提供する料理のクオリティが下がり、お客様の満足度を損なう可能性があります。
逆に、原価率が高すぎると、お客様は「この価格でこんなにボリュームがあっていいの?」と驚き、満足度は上がるかもしれませんが、店舗側の利益は減少し、赤字につながるリスクがあります。
原価率が上昇してしまう主な原因は以下の3つです。
1. 仕入れ価格の上昇
2. ロス率の増加
3. オーバーポーション
仕入れ価格の上昇は外的要因が大きく、避けられない場合もあります。
ロス率の増加についても、完全にゼロにするのは難しいですが、5%を超えると高水準と言えます。無駄な発注や廃棄物を減らし、ロスを抑える努力が必要です。
最後に、オーバーポーションとは、料理を提供する際に決められた分量よりも多く盛り付けてしまうことです。お客様は「量が多くてラッキー!」と感じるかもしれませんが、これが続くと原価が上がり、利益を圧迫します。
さらに、オーバーポーションがあると、料理の分量にばらつきが生じ、お客様の満足度を下げてしまうこともあります。これを防ぐためには、レシピを数値化して適正な分量を明確に示しておくことが効果的です。
人件費について
各スタッフには給与が支払われています。
スタッフの数が多ければ、一人ひとりの負担は軽減され、個人的にはありがたいと感じるかもしれません。しかし、時給制のアルバイトスタッフが多く、働くほどコストが増える飲食店では、人件費の管理が重要です。
そのため、来店客が少ないアイドルタイムと、混雑するピークタイムを見極めてシフトを調整しましょう。
また、当日のワークスケジュール(時間帯別に仕事を割り当てたもの)をスタッフ全員にしっかりと共有・指示することが大切です。
さらに、人件費を削減するためにはスタッフのスキル向上も欠かせません。
「特定のスタッフがいないとこの作業ができない」という状況を減らし、すべてのスタッフが多くの業務をこなせるようになれば、人件費を大幅に削減できるでしょう。
営業利益について
飲食店が本業で得た純粋な利益を示す指標が「営業利益」です。その計算方法は以下の通りです。
売上総利益(粗利益) – 販売費および一般管理費(販管費)= 営業利益
まず、「売上総利益(粗利益)」について説明します。これは「売上高」から「売上原価」を差し引いたもので、飲食店の場合、食材や飲料の原価、テイクアウトを行っている場合は包装資材の原価などが含まれます。計算式は次の通りです。
売上高 – 売上原価 = 売上総利益(粗利益)
次に、「販売費および一般管理費(販管費)」とは、人件費はもちろん、水道光熱費、備品や消耗品費、修繕費など、店舗運営に必要なさまざまな費用を指します。
ここで重要なのは、販管費の中でも「備品・消耗品費」と「修繕費」です。これらの費用を適切に管理することで、無駄な出費を抑えることができます。具体的には、備品や消耗品の無駄遣いを防ぐことや、日々の清掃とメンテナンスを徹底することで、椅子やテーブルなどの修繕費を減らすことが可能です。
この取り組みは、飲食店の基本である QSC(Quality:品質、Service:サービス、Cleanliness:清潔さ)の「Cleanliness(清潔さ)」にもつながります。清潔な環境を維持することは、お客様の満足度を高めるだけでなく、店舗の利益向上にも寄与します。
まとめ
お客様を笑顔にする繁盛店を築き、飲食業界をさらに活気づけていただければ幸いです。